週刊 福田陽介

No131 「あの世に行きたい」と患者さんに言われたら・・・

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週間 福田陽介

No131 「あの世に行きたい」と高齢患者さんに言われたら・・・

平均的に見て、一般的な「リハビリテーション」の仕事は、高齢な患者さんが対象になりますよね。

「放っておいても勝手に良くならない」状況に陥っている患者さんに対して、リハビリテーションのオーダーが出ることが一般的です。

高齢の方や、絶望的な症状をお持ちの方はしばしば

「死にたい」

と、口にされることがあります。

そんな時、あなたはその人にどんな言葉をかけるでしょうか?

「いやいや、そんなことを言わないでくださいよ(そんなこと言うもんじゃない)」

という感じで「死にたい」気持ちを否定しますか?

「そんなこと言ったら、ご家族が悲しみますよ」

という感じで「生きたい」気持ちを植え付けますか?

どれが正解かなんてわかりません。

世の中の困難な問いというのは、一つの正答にたどり着くのが困難な問いではなく、「正答が複数ある」のに、一つの解を求められる問いであると思います。

ボクが臨床にで始めた頃、重い麻痺で入院が続く患者さんを担当しました(片麻痺)。

現状に絶望している様子があり、「死にたい」と口にされていました。

リハビリテーションに対しても前向きにはなれない様子でした。

リハビリテーションの一つの目標である「社会復帰」には、本人の意思、本人の協力が不可欠です。

ボクはとっても困りましたよ。

先ほどの二つのセリフが口から出ましたが、そのセリフはどちらも不正解だったようです。

未熟なボクには、当時その状況を打開するすべがありませんでした。

 

数年後、人間としても、療法士としても多少は成長したと自負できる状態で、ある高齢患者さんを担当しました。

その人も「早くあの世に行きたい。生きていても仕方ない。もう十分生きた」と口にして、少なくとも意欲的ではありません。

何十年も生きてきたその人が「もう十分生きた」と言っているのなら、「そうかもな・・・」と妙に納得してしまいます。

ボクは

「そうかもしれないですけど、でも、あの世というのは自分から行くところじゃないですよ。順番があって、呼ばれるまでは言っちゃいけないことになってるんです。順番くるまではボクと過ごしてくださいな」

なんて言葉が出るようになっていました。

我ながら、人として大きくなったな、と実感した20代中盤。

ところが、、、

「あんたはまだ若いから・・・」

と言われ、状況は何も変わりませんでした。

たしかに。

命を知るにはある程度の経験をしていても、命を語るには、ボクは若すぎたのかもしれません。

そこでも、ボクは黙るしかなかったわけです。

だったら・・・

「早く年を取りたい。言っていることに実年齢が追い付けばいいんじゃないか」

そういって、世間が「若く見えること」を賞賛し、老けこんで見えることを「罪」のように捉える中、ボクは年上に見られることを望みました。

そうじゃなかったんです。

見た目でも、言葉でもないんです。

それに気づいたのは、37歳の今。

歳はとりました。だけど、日頃の鍛錬のせいか見た目は若々しい(と言われます)。

時間が経ったので、山のように言葉を手に入れました。

だけど「死にたい」と言っている人が欲しかったのって、それとはほとんど関係ありません。

「生きている希望」とか「生きる意味」とか「生きる理由」

なんです。

37歳にして気づいたのは、ボクに「そういう技術」が身についてきたから、だと思います。

高齢になって、毎日同じように症状に悩まされたら、それは「死にたい」と思うでしょう。

そうしたら、症状の緩和を図り「体は変化するんだ(良くなるんだ)。明日は今日と同じじゃないんだ」と実感してもらえばいいんです。

そこで必要なのが技術です。

筋肉の硬さをとるとか、そういったものは「出来て当たり前」。

「相手が望むものを知る技術」

「相手が望むものを与える技術」

それが「希望」に結実するんです。

86歳で、毎回「死にたい」と言っていた人が、88歳になり「もうちょっと生きてみようと思う。孫とも約束した」と話すようになりました。

主訴が消えたわけではありません。主訴との向き合い方は変化しました。

人の命

ということを考え出すと、深い深い世界へ行くことになるのですが、ボクは理学療法士になって高齢者のリハビリテーションに携わって、初めて「希望の種」がまけたかな、と思います。

ボクは16年かかりました・・・

もしも、あなたが目の前の患者さんから「死にたい」と言われたら、何て答えますか?

徒手による技術を超えた「何か」を持っていないと、相手の「絶望」は止まりません。

ボクよりも何十倍も患者さんの命、患者さんの絶望と向き合ってこられた先生の話を聞いて、人として療法士として大きくなりましょう。

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